4代目住職、尼僧です!

35歳で3児の母、ゆるりゆるりと住職やってます

百日間の修行を一緒に乗り越えた、父の形見の念珠の話

もう10年以上前のこと、私が高野山での修行に入るちょっと前のことです。
その日私は修行で使う衣や経本、身の回りのものなどを準備していました。

「念珠は梅か榧(かや)だって。なかったら買えるみたいだけど。ある?」

と亡き父に訊ねました。
すると父は念珠がたくさん入った引き出しをゴソゴソと探し、「あるぞ、ほら」と梅の念珠を一本くれました。その念珠は、大柄な父には小さめの一尺二寸のサイズで、珠の色は年季が入った飴色で、よく見ると傷がついていたり少し欠けていたりして…。聞けばそれは父が修行のときに使っていたものだったそうです。父からその念珠を一本借りて、予備のもう一本を新しく購入して、高野山での修行に入りました。

 

私の修行は3回に分かれて行われました。
2008年8月に1週間、2009年2~3月に6週間、2009年8~9月に6週間の計13週間の修行でした。父からお下がりの念珠をもらったのはおそらく2008年7月のこと。父はその後2009年2月に亡くなっているので、2回目と3回目は「父の形見の念珠」を握りしめながらの修行でした。

 

修行の話や父が亡くなった話などはこちらをどうぞ。

 

 

修行中、念珠は数を数えるために使います。修行のお次第の中には、例えば「『南無大師遍照金剛』と千遍唱える」などというようなものがあります。そのとき、『1回…2回………578回…579回…』などと数えていては、集中できません。そのときに、念珠の珠をひとつひとつ指で繰って数えていくのです*1

梅などの木の念珠は、使えば使うほど色が濃くなり艶が出てきます。一緒に修行した仲間たちのほとんどは修行に入るときに買った新品の念珠を持ってきていたので、色が変わった私の念珠を見て「いい色が出てるね、かっこいい」と言ってくれました。父のお下がりの念珠は、サイズや形がまわりのみんなのと違って実は少し使いにくかったのですが、年季が入った色や傷を「父も今の私と同じ修行を終えた勲章なんだ」と誇らしく思っていました。

 

修行があと残り数日になったとき、修行開始からずっと使い続けてきたお下がりの念珠が切れてしまいました。切れた念珠をそのまま使い続けることはできなかったので、残り数日は予備に持ってきた念珠に持ち替え、お下がりの念珠はお守りとして袂に入れて過ごしました。 そして、およそ百日間の修行を無事に終えることができました。

 

修行を終えたあとは、1泊は高野山の親戚の家に泊めてもらいましたが、翌日にはそのまま荷物を宅配便で送り、飛行機に乗って家に帰ってきました。しかし、家に帰ってきて荷物の整理をしていると、修行を終えるときまであったはずの父の念珠が見当たりません。大事な父の形見の念珠なのに…と必死に探しましたが結局見つけられませんでした。
父の形見の念珠であり、百日の修行を共に過ごしてきた思い入れのある念珠を失くしてしまったのはショックでしたが、父の念珠が修行中ずっと護ってくれてそれで役目を果たしたんだなと納得することができました。 修行中、掌の中で父の形見の念珠は大きな力になりました。辛いときに念珠に刻まれた傷を見ながら、父も同じように修行を頑張ったんだなと自らを励ましたのも一度や二度ではありません。

 

 

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今、私のお参りカバンにはこの2本の念珠が入っています。2本とも梅の念珠です。右は実はこれもまた父が使っていた念珠の中から見つけた梅の念珠、左は3年くらい前に自分のために買った梅の念珠です。梅などの木の念珠は、使えば使うほど色が濃く艶がでてきます。私が買った左の念珠も最初と比べたらかなり色が変わりましたが、父が長年使っていたものにはまだまだ追いつけません。

 

将来、うちの子どもたちのうちの誰かが修行に行くと言ったときには、この念珠を渡して送り出そうとこっそり思っています。その日のために、私も梅の念珠を一生懸命育てています。

 

こうして念珠を育てながら思うのですが。
毎日使って育てた念珠を持たせて修行に送り出すなんて、なんだか魔女の宅急便のキキとお母さんみたい。

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「お母さんのほうきは古くていやだ」

 

「だからいいのよ、嵐にだって驚かずに飛ぶわ」

 

 

いつの間にか、キキ側からお母さん側に感情移入するようになってた(〃´∪`〃)ゞ

 

 

父はあのときどんな気持ちで私に自分の念珠を手渡したのか。
あまり深くは考えていないように見えたけれど。
いろんな思いがあったのかもしれないな。

 

 

今となってはもう聞けないけれど。

 

 

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*1:だから、数える珠=数珠というそうです